伊藤一彦

痛ましき思ひはてなし迢はるかなる能登半島の羽咋はくひの御墓 今からもう三十年前に成だろうか。金...

春の夕あわを食ひたるくやしさに水中のごときニシタチを行く さすが草太さん。黄雲が酒の異称である...

黄雲のたなびく方へむかひゆく一本道に人影をみず あつこさんが子どもの時の学校時代はそうだったの...

むらぎもの火矢放つなり透きとほる空のむかうの君の牙城に 若い二人の恋歌に刺激された。まして今日...

隠さずに見てほしかったの鰐の私　さよならヒコホホデミノミコトよ 豊玉姫曰く「見るなとあなたに一...

ころされし嬰児あまたの心音をガザの御空の寒星伝ふ さすが「玲瓏」のあつこさんだ。「五月来る硝子...

鬼よりも恐ろしきを身にかくまひて人は花見る明日なき花を 鬼を苦しめ滅ぼしたのは人間である。馬場...

はるけしよ如是我聞の世　かはらずに冬銀河照る下に立てれど あつこさんの歌、なるほど。裕子さんの...

授賞式より祝賀会より二次会が熱気まさらむ顔紅こうにして 明日は宮崎市で第二十八回若山牧水賞授章...

寒き夜に「襯衣シャツ」の「襯しん」の字書きてをり誰の身を温めむとするか 草太さんの歌から高野公...